今日は、久々に本のレビューです。
わかりすぎて心がヒリヒリ
最近、仕事絡みで読んだ、朝比奈あすかさんの『君たちは今が世界(すべて)』という本。
6年3組の子ども達が、先生を甘く見て、学級崩壊気味。
集団として、良くない方向に暴走してしまいます。
罪悪感や、素直な心・良心といった本来の自分の感じ方に蓋をしながら、悪ぶる友達に合わせて、いろいろやらかすようになってしまった子。
中学受験の塾を居場所にして、学校での傷つくことは
「こんなものは、全部通り過ぎる」
と心の中で繰り返し、今を乗り切ろうとする子。
おそらく発達障害で、本当は心の優しい子なのに、周りから誤解されてしまう子。
学級内カーストのトップのグループに君臨しながら、家庭内では、汚部屋、母親の無関心・兄弟仲の悪さなどで居場所がない子。
大人達も、実にさまざまです。
子どもの現実に向き合えない親、子どもをよく見て寄り添える大人。
児童に対して、
「皆さんは、どうせ、たいした大人にはなれない」
と言ってしまった先生。
大人にも子どもにも言えることですが、起こった現象だけ見れば、問題行動を起こす子どもだったり、配慮の足りない大人だったりするわけですが、一人ひとりの背景をよく見ると、それぞれの抱えている問題の苦しさの表れであったりする。
だからといって何をしてもいいわけではありませんが…。
そんな視点が得られる内容という点で、良書だと思います。
今の小6あたりの年齢でよくありそうな、子ども達のいろいろが丁寧に描かれていて、読者は、自分や周りに思い当たることがたくさんあるのではないかと思われる、ヒリヒリした文章でした。
でも、最後の章では、6年3組のある1人の子どもが大人になった視点から、その後のことが振り返られていて、救いのある内容で終わっていましたよ。
問いを強要せずに味わいたい本
この作品は中学入試で多く出題されたそうですが、こういう文章は、引用する箇所によっては、入試や感想文の題材としてはメッセージ性が強すぎるんじゃないかと、個人的に思います。
子ども達が自分の体験に引きつけやすい内容であるがために、主観で答えてしまいがちになったり、個人的に嫌な体験を思い出して、その後の試験に集中できなくなるという事態も懸念されたり…。
逆に、こういう文章に何も感じない、あるいは、感じていてもそれに蓋をして上手に解答する、または感想文を書くことだけを追求する子どもを量産することになったら、それはそれでいかがなものかと…。
設問の答えや感想を求められない状況で読めば、仮にうまく言語化できないにしても、必ず子ども達の心に何かしら響くことがある内容だと思うので、私は、できれば問いの答えや感想文を要求しない形で触れてもらいたい作品だと感じました。
「君たちは今が世界(すべて)だと感じているかもしれないけれど、ずっと今がすべてなんてことはなくて、世の中にはもっと広い世界が広がっているのだから、今が辛い人も、希望を持って前に進んでほしい」
というメッセージが込められているように感じるこの本。
大人が読んでも、もしかしたら、子どもの頃のトラウマが癒されるかもしれません。
朝比奈あすかさんの他の本
私は教材の素材となる文章を選ぶとき、上記のような理由から(グレーの部分)あまりに衝撃的な作品は選びませんが、入試問題や問題集がきっかけとなって、その作品の全文を読んでみたいと思う子どもが増えるなら、それは歓迎すべきことだとも思います。
だから、私も教材や模試を作る時には、その後の読書につながってほしい作品を選ぶようにしているのです。
中学入試で出題した学校は、そういったことが狙いだったのかもしれませんね。
朝比奈さんの作品は、他にも入試で使われたものがあるようなので、そういう意味で評価の高い作家さんなのだと思います。
私も今、我が子の受験で精一杯ですが、今の状態(受験)が世界のすべてではないのだという視点を忘れず、子ども本人より親が入れ込んでしまうことのないよう、気をつけないと、と思っています(*´Д`)。
大人も子どもも、親も子も、一生「修行の途(みち)半ば」なんですよね。
おまけ(六曜について)
この作品でも、中学受験にまつわるエピソードがでてきますが、受験シーズン真っただ中のこの時期、よく読まれる記事があり、今年もよく読まれています。
受験料の振り込みや出願のとき、大安や仏滅と言った六曜を気にするかどうかという、刹那君が高校受験をしたときの記事です。
六曜の意味もまとめていますので、気になる方がいらしたら、なにかの参考になれば…。
そんなこんなで、受験のアップアップに加えて、仕事では題材文探しのためにたくさん本を読まなければならず(小説、随筆、評論、詩、短歌・俳句、古文、漢文…何にせよ多すぎる…_(:3 」∠)_…)、あまりみなさんのBlogの読み回りができておりません…すみませんm(__)m…。
高校生のいる暮らし
本と共にある暮らし