昨日2話めを放映した、ドラマ「下剋上受験」。阿部サダヲさんが、涙もろくて熱い、なんとも素敵なお父さんを演じていらっしゃいますね。深キョンもかわいらしいお母さんだし、娘の佳織ちゃんを演じる子役さんの山田美紅羽ちゃんも、素直でかわいらしい中に意思の強さを感じる、素晴らしいお芝居をされています。何気なくつけていたテレビでしたが、グイグイと引き付けられて、1話から観ています。
本が出た時から気にはなっていたのですが、ドラマ化されたのをきっかけに、やっと原作本を読んでみました(遅い?)。
下剋上受験[文庫版] ―両親は中卒 それでも娘は最難関中学を目指した!
- 作者: 桜井信一
- 出版社/メーカー: 産経新聞出版
- 発売日: 2016/12/22
- メディア: 文庫
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最難関私立中学を受験するのには、有名な中学受験塾に通うのが王道、という世界において、「親塾」を選択したという、レアケースな受験体験記です。
私立中学の入試問題は特殊で、小学校の勉強だけではカバーできないので塾に通うわけですが、桜井さんは、塾には通わず、中学受験の経験のない親が、子どもと一緒にすべてを勉強し、理解し、教えるという「親塾」という方法を取ります。
本を読んでみてわかったのですが、著者の桜井さんが「親塾」で受験に挑もうと思ったのは、塾だと、自分の娘は(桜井さんの言葉を借りれば)「上澄み」(上位層中の上位層、という意味かな?)にはなれず「沈殿層」(上位層以下、ということになるかな?)になる危険があると危惧したからだそうです。そうなると本人のモチベーションが下がり、ただ通うだけになって、期待するほど成績は上がらないということになる。なるほど、確かに集団の塾では、個人の進みかたに合わせきれないところがあるでしょう(そのためか、「個別指導も併設していますからご安心を」と言われるらしい)。
その点、「親塾」なら、完全オーダーメイドで我が子に合わせた進度で進むことができますね。通塾のための移動時間も必要ないですし、費用も節約できます。塾に任せっぱなしになるよりも、子どもがどこができてどこができないかを把握しやすいし、親子で同じ問題を解いていることで、子どものつまづきやすいところも予測がつきます。「あの問題のあの部分が……」と言えば通じる。そして対策ができる。これは、「親塾」ならではのメリットといえますね。
しかし、デメリットもあります。それは、まず親が相当の時間と労力を勉強にかける必要があること。実際に桜井さんも、毎晩夜中まで予習し、翌日佳織ちゃんに説明できるようにしていました。仕事をしながら、この時間と労力を捻出するには、相当の意思の強さが必要ですよね。
それから、デメリットのもうひとつは、桜井さんも書かれていますが、「感情的になってしまう」こと。何度説明しても子どもができないとき、イライラが爆発して
「なんでこんなこともできないんだ!」
と怒鳴ってしまう。親子だから、こういうときにお互いに歯止めがきかなくなりがちなんですよね。私も、子どもたちの宿題を見ているときなど、「イライラ」を通り越して「激怒」してしまうときがあります(反省)。
「なんでこんなのができない?」
「さっきから何回同じことを言わせるんじゃ!」
などと、親として子どもに言ってはならない言葉を連発(自己嫌悪)。
これは明らかに、親が子どもに勉強を教える際のデメリットだと思います(苦笑)。
しかし、こうして、桜井さんは、娘さんと二人三脚で最難関を目指します。
……結果的には、最難関には届かなかったようですが、難関中学には合格し、現在は東大を目指して楽しく頑張っているそうです。
桜井さんは、ご自身を「中卒」とおっしゃっていますが、実は桜井さん、とても頭のよい方なんではないかなと感じました。
受験業界や塾に対しての鋭い洞察もさることながら、中学受験の異様にハイレベルな問題を、苦戦しながらも自分で理解していくということ、そのための労力を惜しまないというところ、そして、行き詰まるたびにじっくりと考え、何かしら打開策を見出していくところ……。賢さと行動力がないと出来ることではありません。娘への愛情があるというだけでは、なかなかできないことを成し遂げられたな、と思うのです。
ただ、連日の睡眠不足とストレスから、ご自身がうつ病になり、薬を飲みながらの大変な毎日であったことや、塾に行っていないがための情報の少なさから書類作成で慌てたこと、入試前に小学校を休ませていたことによる佳織ちゃんのプレッシャー。諸々考え併せると、「塾に通わせたほうがよかったかな」と思うところもあったようですね。
我が家は、中学受験が過熱しているわけではない地域に住んでいるため、子どもたちは中学受験はしませんでしたが、これから高校受験に挑もうとするとき、桜井さんの奮闘はおおいに参考になるなと思いました。
塾に通うのか通わないのか、という迷いもさることながら、
「もっと勉強しておけばよかった」
「我が子には勉強して充実した人生を歩んでほしい」
という桜井さんのヒリヒリした気持ち。
理解できます。
そして、
「勉強って、案外楽しい」
と、ご自身も感じ、佳織ちゃんもそう言えるような受験になったこと。尊敬します。
きっと、親子で歩んだ思い出は、一生の宝物になるんでしょうね。
私もいろいろ考え込んでしまい、たぶん今夜は眠れません(苦笑)。
でも、我が家の受験への向かい方を考えるいいきっかけとなりました。
よくぞ、この手記を発表してくださいました、という思いです。
今後も、ドラマにも注目して行きたいと思いますし、桜井さんの他の書籍もあるようですから、目を通しておきたいなと思っています。
中学受験テキスト 下剋上算数 基礎編――偏差値40から55への道
- 作者: 桜井信一,馬渕教室
- 出版社/メーカー: 産経新聞出版
- 発売日: 2014/12/19
- メディア: 大型本
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桜井さん、うちの子受かりますか? ―中学受験 親の悩みにすべて答えます
- 作者: 桜井信一
- 出版社/メーカー: 産経新聞出版
- 発売日: 2015/07/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ああ、でもなんだか、受験、怖いなあ……(苦笑)。