ママンの書斎から

ミドフォーママンの考えごとなど

山本一力『あかね空』と『菜種晴れ』

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仕事がらみで、山本一力さんの本を2冊読みました。  

  

  

  

どちらも江戸時代のお話でした。

「おっかさん」

とか、

「おとっつぁん」

とか言っていた時代だし、

「てぇへんだ、てぇへんだ!」

などという江戸っ子のべらんめぇ口調がしょっちゅう出てくるので、読み慣れるまでに少し時間がかかりました(笑)。

  

『あかね空』の方は、京都で修行を積んだ豆腐職人が、江戸に出てきてお店を構えるも、柔らかい京の豆腐は、固い豆腐に慣れている江戸っ子の舌に合わずに、なかなか受け入れられない。しかし、あきらめずに頑張って少しずつ商売の道を開いていき、店を構えるのを手伝ってくれた娘と所帯を持って子どもが生まれ、その子どもたちが大きくなって代替わりをし……というようなあらすじです。

  

『菜種晴れ』の方は、勝山の菜種農家で育った3人兄妹の末っ子の女の子が、江戸の油問屋に養女にもわられていきます。実の母親の料理のやり方を見よう見まねで覚えるほど勘のいい子で、5歳にして天ぷらを揚げる腕が確か。油問屋でも大事に育ててもらって、天ぷらが得意なことから、料理の修行もさせてもらえます。そして、10年後、油問屋の跡取り娘として広く世間に知られるようになった矢先、大火事で、店と義理の両親を一度に失い……さぁ、どうなるでしょう?

  

私は、山本一力さんの小説はこの2作しか読んでいないのですが、最近流行りの軽ーい感じの小説とは違って程よく重厚なので、読み応えがあります。
会話だけに何ページも費やしてポンポンと話が進むような、今風の読みやすい小説ではないけれど、ストーリーが面白いので、引き込まれてぐんぐん読めます。

  

2作品に共通するのは、江戸が舞台で、商売(家業)とか家族のあり方がテーマ、ということだと思います。

  

豆腐屋にしても油屋にしても、長く贔屓にされる店というのは、他店を陥れたりなどのずるいことをしない、とか、挨拶をしっかりする、とか、お客様ファーストで、仕入れ値が上がっても商品はむやみに値上げしないとか、そういう誠実な商売をしているという点で共通しているのだな、と感じました。
そして、家業である以上、家族の仲が良く、それぞれの役割をきちんと果たしているということも大切なんですよね。
やはり、世の中は因果応報で、良い行いをしていれば良いことが返ってきて、悪いことをしていれば悪いことが起こる、それは変わらない真実なのだなぁと感じます。

  

小説はフィクションですが、いろいろな小説をたくさん読んでいると、描かれている内容の本質は、同じようなことであることが多いものです。「因果応報」はその典型的な例と言えるでしょう。だから、因果応報はやはりこの世の真実なのだと私は思っています。

  

物語の主題かどうかはわかりませんが、上記の2作品に共通していることとして気になったもう1つのことは、主人公あるいは登場人物が、不慮の事故や災害で、突然両親や婚約者を失う体験をしているということです。

足を踏み外して高いところから落ちたり、人力車に引かれたり、家事や地震に遭ったりということが原因で、思いがけなく大切な人を失くす経験……。これは、山本一力さんの作品のテーマの1つなのでしょうか。だとしたら、何が言いたいのでしょう?        

今を大事に。
身近な人を大切に。
誠実に一生懸命生きることの尊さ。
      

そういうことを言いたいのかな。

  

たまにはこういう時代物を読むのも良いですね。   

「古き良き時代の小説」には、滋味深い味わいがあります。

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