「受験うつ」という言葉……少し前に知ってから、気になっていました。
この本では、おもに大学受験生を対象にしているようなのですが、高校受験生にもあてはまると思います。
著者の吉田たかよしさんは、心療内科の医師で、「本郷赤門前クリニック」の院長でいらっしゃいます。灘中学、灘高校から東大工学部へ進まれ、卒業後はNHKアナウンサー、衆議院議員公設秘書などの経験もある方だそうです。
まず、「受験うつ」とはどのような症状を指すかというと、
・「うるさい」「ほっといて」が口ぐせに
・やさしかった子が、突然暴れだす
・先生や友だちへの批判や悪口が急増
・急に志望校のレベルを上げたがる
・記述式の問題が解答できなくなる
・図形問題や長文問題が解けない
・不得意教科を見下すようになる
・カゼをひきやすく、微熱が続く
・背中、腰、脚などあちこちが痛い
・風呂に入るのを嫌がるようになる
などなどだそうです。
そして、「受験うつ」の予防・克服には、親のサポートが欠かせないそうです。
受験うつの子どもを持ったとき、「親がなすべきこと」として、以下のようなことが書かれてありました。
まず、子どもの変化にいち早く気づくところから始まり、受験生の親は、よい「MANAGER(マネージャー)」であり、よい「ATENDANT(アテンダント)」であり、そして、よい「COACH(コーチ)」でなければならないそうです。
略して「MAC」。
「マネージャー」とは、芸能人のマネージャーのように、
・受験票必要な情報は親が集める
・「受験日程表」を作ってあげる
・1日のスケジュールを書いてあげる
・塾・予備校・学校との調整を行う
などを行います。
「アテンダント」とは、
・笑顔を心がけ聞き手に徹する
・試験会場の下見には3日間かけて
など。
そして、「コーチ」としては、
・褒め方の良し悪しを知る
・良かった結果を過大評価しない
・試験中のトラブル対処法を伝える
などなどだそうです。
「褒めて伸ばす」ことが声高に叫ばれる昨今ですが、ただやみくもに褒めればいいというものでもないそうです。「褒め方を間違うとかえって子どもをダメにする」ことも、研究で立証されているのだとか。
それにしても、ここまでのサポートを求められる親も、なかなか大変ですよね。
「ここまでで親が手取り足取りやってあげなきゃならないの?」
「甘やかしすぎじゃない?」
という反論も、もちろんあるそうですが、著者は、「受験うつ」を発症している子どもは、脳の機能がうまく働いていない状態(病気)になっているので、煩雑で時間を取られる情報集めやスケジュール管理、試験会場の下見などを親がサポートすることによって、受験生に
「安心を与える」
「心をラクにしてやる」
ことが何より重要で、それが受験までを乗り越える鍵になると言います。
私自身の大学受験を振り返ると、高校時代は親元を離れて下宿生活をしていたので、スケジュール管理や事務手続きなどもすべて自分でやっていました。なんとかこなしましたが、親がサポートしてくれている自宅生は勉強だけに集中できていいなあ、と、思ったことは何度もあります。そして、受験期後半は、過酷な受験勉強に息切れしている自分を自覚していて、チャレンジ校に挑戦するよりは、確実に受かりそうな大学を選びたい、という気持ちになり、実際にそうしました。
あのとき、もしも親や塾に情報集めやスケジュール管理、事務手続きなどを頼ることができていたら、勉強だけに集中できて、チャレンジ校に挑戦する気持ちにもなれたかもしれない、と、思わないでもないです。私、受験うつだったかもしれません(苦笑)。まあ、そのぶん、大学時代は弾けて、キャンパスライフを謳歌しましたけどね(笑)。
うちの子どもはまだ高校受験ですが、手術や、部活の最後の大会を棄権せざるを得ないことなど、もうすでにストレスはじゅうぶんすぎるほど抱えてしまっています。これからの受験生活では、これまで以上に精神的・物理的なサポートが必要だろうなと感じているので、具体的に親はどうすればいいのかが書かれているこの本は、読んでよかったと思いました。
そして、この本を読んでハッとしたことなのですが、「受験うつ」の子どもを抱えている親もまた、「うつ」になりやすいのだそうです。子どもより重症な例も珍しくないのだとか。
確かに、自分も、腰が痛いとか頭から汗が吹き出すとかいう事情を抱えながら、苛立つ受験生に付き合うのは、本当に大変です(笑)。
「受験生の親うつ」というのも、ありえる話だなと思います。
受験生のサポートを頑張っているママンほど、自分の心も疲れていないか、気を付けないといけませんね。
自分のこともいたわりつつ、子どものサポートを頑張りたいものですね。
この本は、「親がなすべきこと」の具体例が書いてありますが、「受験うつ」という病気そのものについて具体的に掘り下げた本もあるそうです。
こちらも読んでみたいと思います。