息子の部活が、最後の大会を控えています。息子の部活では、3年生が引退するときに、部長が、次期部長、副部長、キャプテンを2年生の中から指名して引退する決まりです。
息子は、去年の3年生の引退時に、前部長から指名を受けて部長になりました。
正直なところ、表面上はうまくやっているようでも、副部長、キャプテンの協力はあまり得られず、他の3年生も助けてくれるわけでもなく、孤軍奮闘という感じで苦しい1年でした。今やっと終わりが見えてきて、よくぞ投げ出さずにこれまでやってきたと、ほめてやりたい気分です。
今度は次期部長を指名する側に回るわけですが、誰か考えているのかと聞いてみたところ、なかなか深く考えているようでした。
A君は、技術もうまく試合でも活躍できるけれども、自分のことに終始しがちで、全体をまとめることができない。トップの責任を嫌がり、プレーだけを好きにやらせてほしいが、何の役にもつかないというのもプライドが許さないタイプ。副部長あたりがいいかも。
Bくんは、プレーは部内で3番手くらいだけれとも、全体が見えているし、我を通すこともあまりしない。時には自分を抑えてチームのことを考えた判断を迫られる部長には向いているかも。
Cくんは、うまいけどチャラついている(笑)。
ときどき練習をサボる。でも試合では誰より盛り上げるからキャプテン向きか。役を与えることで責任感が生まれればサボりもなくなり、プレーもさらに伸びるかもしれない。
などなど。
我が子ながら、試合ではあまり勝てなかったけれど、部長経験でだいぶ成長したなと感じました。
集団を動かすときには、誰を動かせば全体が動くか、考えないといけません。
数年前、親戚の葬儀に参列したときのことです。
葬儀社の方が一切合切を仕切ってくださっていたのですが、法要後の会食のとき、
「席順は特に決まっていないので、奥から詰めてください。」
とのことでした。が、その指示が全体に届いていなくて、みんな思い思いの席に着き始めていました。
私は、集まった親戚の中ではこれでも若いほうだし、血縁としても遠い方でした。なので、あまり奥まで行くのも気が引けて、もっと歳上の、親戚のなかでも近しい方たちが奥の方に行くべきじゃないかなと思い、私はできるだけ末席のほうにいようと思っていました。お手伝いなどに、すぐ立てるようにしていたほうがいいかなと思うところもあったのです。
ところが、いったん座ったところから動きたくないのか、なかなか詰めてくれない年配の方たち(苦笑)。時間だけが過ぎてゆきました。
すると、ついに、葬儀社の方がキレました。
そして、いちばん近くにいた私の肩をたたき、大きな声を出して、私に向かって、
「だから!奥に移動してください!」
と怒鳴りました。
私は驚いて固まり、他の方たちも、大きな声に気づいてこちらを見て、まるで私が怒られるような何かをしてしまったのかというような顔つき。
カチンと来ましたが、葬儀社の方とモメたりしたら、故人に申し訳ないし、喪主や親戚にも迷惑がかかってしまうと思ってグッと我慢し、年配の方々、近しい方々よりもずっとずっと奥の方の、上座?に座りました。でも、その後続いてくる人はなく、結局は年配の近しい人たちが重い腰を上げて奥に移動してきて、私だけが場違いな感じで奥に座って会食を終えました。
葬儀社の方は、葬儀日程の最初からその家族や親族に関わっているわけで、親族のなかでも、誰が中心的な人物で、誰が呼ばれて来ただけのゲストのような親戚なのか、だいたいわかっているはずなのです。私はそのときゲスト的な立場でした。時間が無くて焦っていたのかもしれませんが、末端の私を怒鳴り付けて無理矢理動かすよりも、中心的な人物に声をかけて奥から詰めてもらった方が、全体がスムーズに動いたし、自然な席次になったはずでした。
言っちゃあ悪いけど、あなた、動かす人を間違えてるよ……。
しかも葬儀屋が遺族に声を荒げるなんてどうかしてる……。
と、げんなりしたのを覚えています。
私が、そのときの親戚の中では若くて末端だから言いやすかったのかもしれませんが、あとから他の親戚の人にも、
「あの人(葬儀社の方)、なんであんた(私)を奥に行かせたんだ?」
と聞かれ、
「さあ……?」
と、言うしかなかった私。
後味の悪さだけが残りました。
せっかく亡くなった親戚にお別れを言おうと遠方から駆けつけたのに、何故か怒られて自分にそぐわない席に座り、居心地の悪い思いで会食をした記憶に占められてしまって、とても残念でした。そして、次に機会があっても、その葬儀社だけは使わないことにしようと決めました。
息子の次期部長決めを見ていて、嫌な記憶を思い出してしまいましたが、やはり、集団を動かすには、誰を動かせば全体が良い方に動くか、見えていないといけないですよね。
息子は、今のところ、個人の適性と、それらが全体に及ぼす影響を考えて人選しているようです。こういう視点を持つ経験は、将来何の仕事をするにしても役に立つだろうなと思います。
少なくとも、自分の指示の出し方が悪いのに、動かない人のせいにして声を荒げるような大人にはなってもらいたくないので(苦笑)、今、良い経験をしているなと思って見守っています。
息子が部活から得た財産と言えるでしょう。