今日は、公立高校の入試でよく出ている小説について、いくつかご紹介したいと思います。過去記事で説明文編を書いていますが、
今日はその小説編です。
公立高校入試の小説は、私が調べた印象では、「部活もの」「友情もの」「家族もの」「動物もの」などで、主人公が小中高生であるものが多いと思います。
高校受験をする年代の子どもたちがイメージしやすい現代の作品が選ばれているのでしょう。
例えば、「黒電話」などと文章中に出て来ても、スマホ世代の子どもたちには何のことかわからず、注釈が必要になるそうです。そういった事情から、あまり古い時代の作品は、題材文として使い勝手が悪いのでしょうね。
それにしても、今どきは「黒電話」に注釈が必要と知った時は、カルチャーショックでした(笑)。
今日は、「部活もの」について目につくことが多い作品を挙げてみます。
まず、言わずと知れた
『バッテリー』(あさのあつこ)
野球少年のお話ですが、本当によく使われました。少年の心情描写が秀逸と評される、あさのあつこさんの作品です。
数が多いと感じるのは、「陸上部もの」です。
『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子)
陸上に打ち込む部員たちのお話です。ちょっと長いですが、一気に読める感じです。
『もう少しあと少し』(瀬尾まいこ)
駅伝のお話です。作者の瀬尾まいこさんは、もともと学校の先生だった方なので、部員と顧問の先生とのやりとりの描写には、ご自身の経験が反映されているのかな?とも思ったりしました。
『風が強く吹いている』(三浦しをん)
「走る」ということは、題材になりやすいのでしょうかね。
次に多いと感じるのが、「合唱部もの」。
『くちびるに歌を』(中田永一)
『よろこびの歌』(宮下奈都)
合唱ものは、みんなで1つの歌を作り上げるために心を1つにする、というプロセスが取り上げやすいのだと思います。この2作は本当によく見かけました。
他には、多くはないですが、目についた「部活もの」としていくつか挙げますと……。
サッカー部『サッカーボーイズ』(はらだみずき)シリーズ多数
サッカーボーイズ 13歳 雨上がりのグラウンド (角川文庫)
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弓道部 『卵を持つように』(まはら三桃)
卓球部『チームふたり』(吉野万理子)
『チームひとり』他、シリーズ多数
吹奏楽部『楽隊のうさぎ』(中沢けい)
将棋部『将棋ボーイズ』(小山田桐子)
園芸部『園芸少年』(魚住 )
部活ではないですが、工業高校で頑張る女子高生を描いた『鉄のしぶきがはねる』(まはら三桃)も、複数使われていました。
他にも「部活もの」の小説は、探せばたくさん出てくると思います。やはり、中学生にとっては、部活というのは友情、努力、葛藤、感動……自分の経験に照らして考えやすい身近な題材なので、本当によく使われます。
読書としても入りやすいですよね。
ただ、共感しやすいがゆえに感情移入してしまい、「客観的に読む」という受験国語の鉄則から外れがちになるという落とし穴も考えられます。
自分の感情ではなく、あくまで登場人物の心情を問われているのだ、という注意が必要ですが、中学生が小説を読み慣れるための導入としては、おすすめのジャンルです。
小説の読解は、心が育っていないと感情の機微がわからず得点できない、などとと言われます。精神的に幼い、自己中心的な考え方をする傾向がある、「なんとなく」の感覚で答えてしまう、というようなことでしょうか。あるいは、人の気持ちはわかるけれども、伝わるように記述できない、という場合もあるでしょう。
人の気持ちがわかって、それを記述できるか。
受験国語の小説読解で問われている能力は、いたってシンプルです。
実生活で人の心の機微を学び、作文力をつける。
体験が追いつかない分は、いろんな作品に触れていく。
こうして考えていくと、国語って、「人の道」を学ぶ教科でもありますね。
「部活もの」の小説は、中高生が「人の道」を考える格好の題材ということなのでしょうね。
案外、親のほうが学生時代を思い出してハマってしまったりすると思います(笑)。
親子で同じ作品を読むのも、会話の糸口になっていいかもしれませんね。