とっても可愛らしい絵本があります。
中脇初枝さんの文章に、酒井駒子さんの絵。
『こりゃ まてまて』
という作品です。
福音館書店から出ている、「こどものとも 0.1.2」というシリーズです。0歳(10ヶ月)~2歳くらい向けの絵本、ということになっています。
小さな女の子(だと思う)が、チョウチョやハト、猫などを、
「こりゃ まてまて」
と追いかけていたのですが、最後には、自分が、お父さんに
「こりゃ まてまて」
と抱き上げられてしまいます。
最後にお父さんに肩車されて、
「さあ いこう」
と終わっています。女の子も、お父さんも、にこにこ笑顔。
酒井駒子さんの描く小さな女の子、パヤパヤとした髪の毛や、丸いほっぺや広いおでこが、どうもうちの娘の小さい頃に見えてしょうがありません(笑)。
『ロンパーちゃんとふうせん』という絵本でも、
小さなロンパーちゃんが、うちの娘の1歳~2歳頃をを見ているようで、買わずにはいられなかったのですが、この『こりゃ まてまて』の子も、
「うちの娘だ‼」
と勝手にキュンキュンして買ってしまった親バカです(苦笑)。
こんなのんびりとした時の流れだった時代が懐かしいです。
0歳から2歳くらいまでの頃は、その頃なりの悩みがあったんです。寝ないとか食べないとか、病気ばかりするとか……。
でも、そんなときが過ぎ去ってしまった今では、
「こりゃ まてまて」
と、たどたどしい足取りで動物を追いかける子どもを愛でたい!そんな時間を持ちたい!
という気持ちになります。
今思えば、キラキラとした時期だったなあ。
酒井駒子さんの絵にひかれて買ったこの絵本なのですが、文章が中脇初枝さん、ということに最近になって気付いて、ちょっとびっくりしています。
中脇初枝さんは児童文学作家さんですが、『君はいい子』という、児童虐待を扱った作品しか読んだことがなかったので、そのイメージと、この可愛らしい絵本のイメージとが、うまく重ならなかったのです。
同じ作家さんから、こうも対極的な文章が生まれるものかなあという驚き、というか。
こういう描き分けも、「作家の筆力」なんでしょうね。
『君はいい子』のほうは短編5編なのですが、どれも虐待をテーマにしていて、「5時になるまで帰ってくるな」と言われている子どもの話などで、読後感がいいかと言われれば、「悪い」でした(苦笑)。
でも、この
『こりゃ まてまて』は、読後感が暖かくて、ほっとします。
子育てって、きれいごとばかりじゃなくて、ままならないことの繰り返しで、助けを求められない人は、虐待スレスレのラインでかろうじて自分を保っていたりすることもあると思います。
中脇初枝さんは、『君はいい子』でそういう闇の面を描きながらも、『こりゃ まてまて』では光の面を描いていらっしゃる。
そういう意味で、子育てのリアルを知っている方なのかな、と感じました。
酒井駒子さんの絵も、やさしいタッチではありますが、色づかいなど甘すぎるところがなく、むしろ暗めに描かれているような気がします。
どこか闇を内包しているようなものにひかれているのかもしれません。
暗闇が特別好きなわけではありません(笑)が、世の中、光の面だけであるはずがないというか、闇も内包しているほうがリアルと感じるという意味で。
闇も抱えていると認めた上で、光の方を向いて生きたい、というか。
あっという間に読める、小さな可愛い絵本を入り口に、子育ての、人生の、光と闇まで考えてしまいました(笑)。自分の思考の飛躍っぷりが怖いです(苦笑)。